人文社会科学系大学院コンソーシアム
令和7年3月、これまで本卓越大学院プログラムにおいて連携してきた4大学1機関(千葉大学・岡山大学・長崎大学・熊本大学・国立歴史民俗博物館)に、新たに新潟大学・金沢大学の2大学が加わり、ポスト卓越大学院プログラムとして、「人文社会科学系大学院コンソーシアム」を発足させることになりました。

本コンソーシアムの目的は、卓越大学院プログラムの成果を発展的に継承するとともに、さらにその基礎の上に、「人文社会科学系大学院教育のさらなる振興を図るとともに、その成果を広く我が国の人文社会科学系大学院に波及させ、もって我が国の人文社会科学系大学院における人材養成の高度化と幅広いキャリアパスの確立に貢献すること」(「人文社会科学系大学院コンソーシアムに関する協定書」(以下、「協定書」と略記)第1条)を目的としています。コンソーシアム構成7機関は、この目的に沿って、以下の事項について連携していくことにしています(「協定書」第3条)。
一 教育プログラムの共同構築に関する事項
二 研究指導体制の共同構築に関する事項
三 学位取得過程の組織的な管理に関する事項
四 人文社会科学系大学院における多様なキャリアパスの確立に関する事項
五 人文社会科学系大学院の教育・研究における国際交流の推進に関する事項
六 その他人文社会科学系大学院の振興に関して7機関が協議して必要と認める事項
これらの事業の遂行のために、コンソーシアムには運営会議を置いて全体を統括するとともに、教務委員会・キャリアパス委員会・自己点検委員会を常置しています。
コンソーシアムにおける具体的な重点事業は当面以下の3つです。第一は、それぞれが有する特色ある教育資源を、特定のテーマのもとに結集して、大学間で共有できる教育コンテンツを作り上げていくことです。第二は、組織的な連携のもとに、所属大学を超えて大学院生の研究指導を行っていくコンソーシアム共同指導プログラム(日本版cotutelle)を運用していくことです。これらの具体的な措置を通して人文社会科学系大学院における教育を一層充実させ、大学院教育の魅力を高めていくことを目指しています。

第三は、産業界等との共同・協働を通して、人文社会科学系大学院修了生に、マルチキャリアへの道を切り拓いていくことです。人文社会科学系大学院において、大胆な産学連携を推し進めようとするときに、最初に逢着する困難は、大学院・企業の双方ともに人文社会科学分野の共同研究や協働教育の経験が不足しており、連携の緒を見出すことが容易ではない、という事実です。言い換えれば、産学連携の先行事例にも、大学院生のロールモデルとなり得る人社系博士人材活躍の事例にも乏しいために、模倣という学びから始めることができません。もう一つの困難は、人文社会科学系大学院の規模が、自然科学系・生命科学系に比べれば相対的に小規模であるため、一つ一つの大学院では産業界等との効果的な交渉が難しいことです。
人文社会科学系大学院の広範なネットワークを構築していくことは、以上のような困難を克服していくために大いに有効です。少数であるとは言え、産学連携の経験、そして人社系博士人材活躍のロールモデルが皆無であるわけではありません。連携ネットワークの構築によって、こうした希少な経験を共有化していくことができるでしょう。また、連携によるスケールメリットの創造により、企業団体や経済団体との、いわば多対多交渉のラウンドテーブルを設定することで、幅広く企業の人材ニーズを組み込んだマルチキャリア教育プログラムを大学院教育にビルトインするとともに、企業側・大学院側、それぞれのニーズに合致したインターンシップや共同研究の新規立ち上げが可能になります。
本コンソーシアムでは、このように大学間ネットワーク化の利点を活かした産学連携の推進を重要なミッションと位置付けています。
