千葉大学 卓越大学院プログラム
アジアユーラシア・グローバルリーダー
養成のための臨床人文学教育プログラム

プログラム紹介
Introduction

プログラムの趣旨

人文社会科学、とりわけ人文科学における大学院教育は、これまでは往々にして深い専門性の探求に基づく研究者養成に焦点化され、激動する現代社会の諸課題に柔軟に対応するためのイノベーション人材養成という観点は、必ずしも重要な教育課題として取り上げられては来なかったように思われます。しかしながら、これまで以上に多様な背景を持った人々がグローバルに流動、接触し、それとともに発生する摩擦や軋轢もより複雑化しつつある現代世界において、むしろ多様な文化的背景や感性、変動する社会動態に分け入りながら、その中から課題解決の指針を示し、リーダーシップを発揮していくための新しい人文的学知の重要性はいよいよ増していると言うべきでしょう。そのような観点から、社会実装に架橋するための、現代社会を生きていくための人文的学知の刷新はただちに果たされるべきでしょう。本プログラムでは、人文科学の発想を基礎に据えながら、進化したDigital Humanitiesの方法を融合し、人間社会における未知の事態に対して指針を示し得る大学院教育プログラムを遂行していきます。

臨床人文学教育プログラムガイダンス2021

プログラムの特色と卓越性

本プログラムにおける第一の焦点は、アジアユーラシア研究です。この地域はこれからの日本の針路と深い関係性があるばかりではなく、多民族・多言語・多文化・多宗教が混在する多元的世界の中から未来社会におけるあらゆる課題が生起している実験場、いわば「課題先進地域」であり、まさに変化してやまない世界に対処する力が試される領域でもあります。この多様な領域を対象として、本プログラムは、千葉大学が海外拠点を有する東南アジア、東アジア・中国をはじめ、ロシア、さらにはイスラーム世界までを展望する多言語多文化理解プログラムを展開する。連携する教育研究機関・企業等は、これらの地域研究において特色ある研究・実践活動の経験を蓄積しており、これらをネットワークとして統合することによって、多言語多文化世界であるアジアユーラシア地域を重層的に洞察することのできる世界的にも卓越した教育・研究拠点を構築することができると考えています。

本プログラムにおける第二の焦点は、Digital Humanities 2.0にあります。変動する世界の動向を見通すためには、GIS(地理情報システム)デジタル情報を通して可視化される環境変動と社会空間を読み解く技法、あるいは社会調査統計やテキストマイニング等の技法を駆使することによって社会動態のトレンドを予測する手法も不可欠となっています。いまやデータサイエンスに関わる教育教化は、高等教育における重要な課題となっていますが、私たちのプログラムは、人文知とアジアユーラシア研究の高度化に向けて、多言語環境での社会統計・地理情報・テキストマイニングにかかる実践的応用教育プログラムを創出することを目指しています。本プログラムにおける「臨床学」的Digital Humanities 2.0とは、データサイエンスという普遍的な学知を、アジアユーラシアの社会動態を掌握するための社会実装に向けてローカライズ、ないし最適化するための未開拓領域への挑戦であると位置づけられます。このように、文化と感性の襞に分け入るミクロな観点・技法(伝統的な「精読」の技法)と、データ解析を中核とするデータサイエンスから俯瞰するマクロな観点・技法(Digital Humanities 2.0によって可能となる「遠読」の技法)とを、二つながら体系的履修の中から修得することが本プログラムの重要な核心です。本プログラムでは、このような基礎の上に、人文社会系大学院におけるトップマネージメント人材養成という博士課程人材養成の新しいモデルを明示化します。

持続性・発展性:本プログラムは、国内の大学・教育研究機関としては、千葉大学・岡山大学・長崎大学・熊本大学・総合研究大学院大学・国立歴史民俗博物館の連携を中核として出発します。ただし、この連携の中で試行された教育手法や獲得された成果は、連携組織の内部でのみ完結することを前提としているわけではなく、むしろこれを全国の人文社会系大学院に積極的に提供し、人文的学知の波及的刷新、人的資源の全国的結集と絶えざる大学院教育の高度化を目指して連携を拡大していきたいと考えています。

アジアユーラシア・グローバルリーダー養成のための臨床人文学教育プログラム:プログラムの焦点と人材養成

プログラム紹介画像01

アジアユーラシア・グローバルリーダー養成のための臨床人文学教育プログラム:プログラムのネットワーク

プログラム紹介画像02

講義等の紹介

「Digital Humanities 2.0研究法」

臨床人文学教育プログラムにおけるデジタル・ヒューマニティーズ部門を担当する小風尚樹助教による開講授業です。デジタル技術と人文知の融合によって生まれる新しい知のあり方を学ぶとともに、その利点と課題を共有し、更なる新しい領域を生み出す第一歩を目指します。


「三次元デジタル技術による遺物の3Dデータ化」

臨床人文学教育プログラムでは、デジタル・ヒューマニティーズで主に取り扱われるテキストデータだけでなく形態(三次元)のデータにも焦点を当てて研究活動を展開していきます。3Dスキャナやフォトグラメトリ、3Dプリンタ、VR等の最新の三次元デジタル技術を活用し、形態を多角的な視点で観察・解釈することで、文化資源の活用・発信に資する新たな視野の獲得を目指します。

2022年度 合同コロキウム

国立歴史民俗博物館におけるデジタル・ヒューマニティーズ ワークショップ

2022年9月7日~9月8日 実施

9月7日(1日目):Digital Humanitiesに関する講義

講義:日本におけるDHのあり方と応用の多様性/後藤真
講義:研究対象からのデータ取得 ーメタデータと情報技術/亀田尭宙

DH研究に関して総合的に俯瞰するとともに、実践的に「実際の研究対象となる資料からデータを取得するとはどういうことか」について、情報技術とともに学ぶ。

Digital Humanitiesに関する講義

9月8日(2日目):Digital Humanitiesワークショップ

モノ資料からのデータ取得とキュレーションに関わるワークショップを実施。所属大学・専攻分野をシャッフルした数名のチームごとにテーマを決めて、歴博の持つ多様なモノ資料の中から、テーマに沿う形で情報を取得し、それらをキュレーションしてバーチャル・ミュージアムを作る。
最後に、それぞれのチームが、1)設定したテーマ、2)バーチャル・ミュージアムの内容、3)資料デジタル化のメリットと課題、についてプレゼンテーションを行う。

千葉大学における研究報告会

2022年9月9日 実施

研究報告会にて

  • 研究報告会にて01

合同コロキウム参加者アンケートから

合同コロキウムのよかった点

・卓越⼤学院プログラムに参加している⽅々と対⾯で交流できたこと。異なった⼤学に所属する異なった専⾨分野の⼤学院⽣とグループワークで交流を深めることで、新鮮な学問的刺激を得ることができた。

改善を要する点

・懇親会などがあればよかったです(今後感染が終息することを期待します)。

その他

・今回発表に参加したことで、⾃⾝に「伝える⼒」が不⾜していることを実感した。こうして多様な専⾨分野の発表に接することで、どのように「伝えるのか」も含めて今後の研究に⼤きな⽰唆をいただいた。

アンケート結果